ライフプランは「悪知恵」か?
先日、Twitterにて、
ライフプランは社会に悪影響である
と言う趣旨に読み取れる反応をいただきました。
ちょっと考えさせられてしまいました。
それは、単純な算数から始まりました。
世帯年収700万円の夫婦が定年退職されたとします。
定年後の生活費は、いろいろな計算方法がありますが、ここでは仮に、現役世代の収入の68%で生活すると試算しました。
もし、この夫婦が年齢同じで、どちらも95歳まで生きたとします。35年間の生活費はいくらになるか?
(700万円×68%)×35年 = 1億6660万円
この金額が、夕刊フジで取り上げられて、かなり話題になったようです。
私自身がこの記事を見たときに思ったのは。
・社会保障が生きている前提で、年金で一部補填できる。
※夕刊フジの記事内でも、一般的な年金1ヶ月約24万円として、
1億6660万円 - (24万円×12ヶ月×30年)=8020万円
すなわち、自助努力による蓄えが約8000万円必要だとしている。
・退職金でも一部補填できる。
※夕刊フジでは考慮されていない。1000万円くらいどうにかなるか?
・そもそも、生活費を出来るだけ絞る努力をすればよい。
※夕刊フジでは、物価が安くて便利な南方の都会へ引っ越すのも選択肢だ、としている。
・やっぱり自助努力は必要。
・それでも足りないなら、完全に隠居せずに働けばいいんじゃないか?
と思いました。Twitterで一言で済ますのに、「すこし引退を伸ばせばいいのでは?」としました。
これが、対象のつぶやき> https://twitter.com/#!/k_matsumoto/status/71536739541458944
これに対して、「若者の職を奪ってでも居座ろうとは?」という反応が届いた、というわけです。
また、夕刊フジの記事に登場する人に対しても、「このような情報に基づいて逃げ切り世代が職場に居座り、結果として若者の雇用を奪うのです。彼らが余計な知恵をつけるとろくなことがない。」とも。
私自身は、年配者の職と、若者の職は異なるものだと思っているので、年配者の再就職が若者の職を奪っている、なんて意識はありませんでした。
ましてや、「このような知恵はろくなことはない」の知恵、すなわち、ライフプランやファイナンシャルプランニングが害悪であるかのような反応はショックでした。
なんでも、ライフプランは結局、金を溜め込むだけになるから、だそうです。消費もせず、引退もしないことが、若者にとって悪影響である、と。
たしかに、現在、金融資産は60歳台以上の人たちに偏在している傾向があります。そして、金融機関では、その蓄えた金融資産では老後の生活資金は足りない、と煽っています。
不安が消費を萎縮させ、引退を先送りさせ、結果、若者にお金と仕事が回ってこない、と。
実際のライフプラン、ファイナンシャルプランは、むしろ、蓄えられた金融資産の運用利回りを上げてもらうことを考えます。すなわち、単なる預貯金、場合によってはタンス預金を、株式や債券市場に回すのです。
また、余裕が出てくれば、余分に消費できますね、とアドバイスすることもあります。地味な旅行を少しでも豪華にするとか、子供や孫にお祝いを多く贈るとかです。住宅資金援助や相続対策としての生前贈与にも踏み込みます。
ライフプラン、ファイナンシャルプランは、生きていく上でのさまざまなリスクを考慮しつつ、将来の安心を感じていただくのが本来の目的です。正しく利用すれば、お金を溜め込むだけ、なんてことにはなりません。
実のところ、ライフプランやファイナンシャルプランを考える必要のない、収入を上げるのにあまり苦労しない人たちが、生活コストを上げすぎてしまい、ちょっと減収になっただけで生活が破綻するようなケースも見られます。
将来の支出予定を見積もり、それに合わせてなるべく早い段階から準備し、亡くなるまでの無用なお金の心配をする必要のない状態を作る。これは、年配者だろうが若者だろうが重要です。
そして、若者には時間がありますから、今、仮に少しのお金しか手に入らなくても、時間をうまく使えば金融資産を大きくすることは可能なのです。
少なくとも、現在の70歳台以上の年配者、団塊の世代より上の人たちは、日本経済がもっとも勢いがあった時代に現役パリバリで働いていた人たちです。ですから、金融資産が他の世代より多いのはある意味当然です。
それをうらやましいがるのでなく、私たちは
(以下、2014年2月12日に加筆)
自分たちの世代がもっと繁栄する自助努力を怠らないようにしたうえ、自らの蓄えを増やしていかなければならない、と思っています。
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