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今ならとても腑に落ちる「黄金の羽根」のあれこれ

正直言いまして、この本の原書の読後感は、あまりいいものではありませんでした。

ただ、サラリーマンをやめて12年以上過ぎた今となっては、そうだよね、うんうんという、共感できる部分が増えてました。

さすがに私自身がマイクロ法人を作るまでには至ってませんが。個人事業でも「黄金の羽根」は拾えますので。

読後感が悪かった理由は大きく2つです。

・ぶっちゃけ当時の「金持ち父さん」を真似た色合いの本で、日本の実情に合わせてあるとはいえ似たような話、似たような厚さで、まさに2番煎じだろう、という印象
・中身は例の公式のほか、運用なんてうまく行かない、生活費と税金を節約すればいい、しかも内容がグレーゾーンに思えて、辞めたばかりとはいえサラリーマンの立場からは容認しがたい内容だった。

以上により、橘玲氏に関してはペンネームでかつ、メディア露出があまりない(顔写真がない)ということで、正直当時はあまりいい印象がなかったです。

まぁ、当人も「当時のような熱気のある文章は書けない」とおっしゃってるとおり、とんがった内容です。

さて、2002年12月発売の原書から約12年が過ぎて、今回、改訂版が発売されているわけですが、その間、原書がトータル30万部も売れたとのことで、橘玲氏は売れっ子作家として認識されました。

※実際には「海外投資を楽しむ会」名義ですでに売れっ子だったようですが、こちらはさらに匿名度合いが高いですね。

そして、これまでに事実上の「黄金の羽根」アップデート版が出版されてました。私も本書を読んで、次の3冊は改めて読んでみるべきかな? と思いました。

この10年ほどの間に、海外に移り住んでいろいろ節税する手法は、どうもうまく行かなくなりつつあるようなので、本書でもあっさり削除されてます。

私は、海外現物資産を買うことに関しても、徐々に懐疑的になってきています。たしかに今後、日本の戦後高度経済成長のようなことが起こりそうな新興国があるのでしょうが、海外資産を報告する制度が始まっている現状では、わざわざリスクを負うほどでもないように思えます。

やはり、例の公式の理解と、マネーコントロールのほうが重要でしょう。ちなみに、例の公式を改めて書くと次のとおりです。

  資産=(収入-支出)+(期待利回り×資産)

本書では期待利回りは「運用利回り」になってますが、事実上利回りはコントロールできないので期待利回りとしています。

そして、仮に収入がゼロでも、資産から生み出せるキャッシュフローで生活できるようになることを「経済的独立」と言いますが、現実には「人的資本からの収入」も重要です。

もちろん、「経済的独立」を続けるための「人的資本への投資」もありなのですが。

最後に、本書を読んで一番びっくりしたことについて。

出版不況といわれているのに、なぜ、出版社は刊行点数を増やし続けるのか? 
私のような無名なブロガーでも、ちょっとのコツをつかむだけで(コツを知るのに費用をかけましたが)出版への道が開けるのか(厳密には出版社を紹介してもらえるだけで、出版できるまでにはいくつかのハードルがあるのですが)。

0章の23ページ~37ページ、当人は「もはやタブーではない」と書かれていますが、出版社の構造的な問題が書かれたこの部分が活字になったのは、画期的だと思います。本が幻冬舎から出ているからGOサインが出たのではないかと推測します。

ともあれ、改訂版の読後感はだいぶ良い印象に変わりました。

改めて、刺激を受ける読者が増えることでしょう。

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