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FIREに向く人、向かない人

世の中では、いわゆるFIRE、ファイナンシャルインディペンデントリタイヤアーリーに憧れている人が多く、それを目指している人、目標の財産に到達してFIREを始めた人、そのFIREを始めてみたものの後日改めて日銭稼ぎに戻っていく人が交錯しています。

FIREをやめる理由は大きく2つが考えられます。1つは見込みが甘かった、もう一つはひとりがさみしすぎる、ってことなのかと理解しています。

優待名人として有名な桐谷さんがたまにテレビや雑誌などでその生活の様子を取り上げられていますが(桐谷)、一部に脚色などあるにしても、あの生活をうらやましいと思えるかどうかが、FIREに向くか向かないかのリトマス試験紙となっている気がします。

そもそも、FIREに関してどのような理解がされているのかによって、それぞれ印象が変わってくるように思います。

第1に、お金さえ貯められたらFIREできるのか? 運用さえうまく行けばFIREできるのか? という点です。

よく知られているFIREのセオリーは次のとおりです。

・1億円をためて投資に回し、年間利回り4%で運用して400万円の利益を得る。

・仕事を辞めてミニマルな生活をして、年間支出を400万円以内に抑える。

・その生活を継続すれば、元本を減らさないまま働かずに一生暮らしていける。

(濱口)

まず、期待利回り4%を本当に何年も続けられるのか、という問題があります。次に、本当に年間支出に400万円も使っていいのか、という問題もあります。

運用のリターンはコントロールできません、大きくプラスになることもあれば、マイナスに甘んじることもあります。そして近年目立ってきたインフレにより、想定外の支出をせねばならないケースも増えてきました。

上記のような元本1億、期待利回り4%による年収400万円をすべて生活費で使い切るかのごとくの生活は、破綻する可能性がかなり高いということです。

ましてや、毎月100万円以上FXで稼ぎ続け、1800万円蓄えられたのでFIREしたが、その後の相場の乱高下により3か月で1200万円を失ったケース(テレ朝ニュース)は、見込みが甘すぎたと言わざるを得ません。ここまでひどい状況でなくても、

人は「一度得たもの」を失っていくことに、「強いストレス」を感じるようにできている。行動経済学でも「プロスペクト理論」として議論されているので当然頭では理解しているつもりだったが、想像以上のものだった。

(柳川)

という具合に、生活していくうちにせっかく蓄えた財産が減っていくことに耐えられなくなる人もいるようです。

以上に関しては、元本を1億ではなくもっと大きくし、期待利回りをもう少し下げ、必要生活費をできうる限り少なくしておく、そこまでやってまさかの事態になっても多少の余裕のある生活をする、という解決方法があります。具体的には、元本が2億円であれば同じ期待利回り4%でも年収800万円、3%でも年収600万円になります。生活費のほうはもっと節約して360万円に以内にするとか知恵を絞ります。生活しても元本が増え続けていくのが理想であり、そのような期待利回りと生活費のバランスを検討する必要があります。

第2に、人は意外と環境の変化に対応するのが難しいし、孤独を貫くことが難しい点です。

「世間一般では、FIRE達成者に対して「完全リタイアして悠々自適に暮らしている」というイメージを持つ人が多いと思います。(濱口)」に関して、私も同様に思います。

でも、そもそも悠々自適な暮らしとはどんな暮らしでしょう? なんでも自由になるのは、本当に幸せなのでしょうか?

何かしらの趣味に没頭できる人は、まだマシでしょう。一方で、仕事をしているなら毎日誰かと会話する環境であったものが、FIRE後、連日のように誰とも話をしない日が意外と多いことに耐えられない、という人も多いようです。

人とのつながりの欠如、社会交流の喪失、アイデンティティーの喪失など(Hoffower、長谷川)が、FIREのデメリットの一部だと考えられています。それらを取り戻すために、仕事に復帰したり、副業を始める、というわけです。

FIREを喧伝するブログ、Youtube、Xなど、マネタイズに必死な様子は滑稽にも思えるかもしれませんが、あれも結局のところ、人とのつながりを求める行動です。誰かの役に立つことが、アイデンティティー確立にもつながります。

一部の人にとっては、だったらFIREとフリーランスの区別がつかないじゃないか、と思うかもしれませんが、圧倒的に違う点は、FIREの場合は「やってもいいし、やらなくてもいい。日々の働き方を自分で選択できる(濱口)」という点です。

嫌な仕事は断れますし、自分が役に立てそうだし、役に立ちたいと思えた時だけ、働けばいいのです。これがFIREの最大のメリットのうちのひとつなのかなと思います。

さて、FIREには縁がなさそうだ、と思う人もいそうですが、そんな普通の人でも70代、80代になれば無職の年金生活となっているかもしれません。そのときに、FIREした人たちが悩むようなことをまさに経験することになりそうです(山崎)。

FIREをキーワードにしていろいろと書きました。私たちは、自分の行動の選択肢を増やすためには、できるだけお金を蓄えたほうがいいのは確かです。ただ、各々の性格により、FIREに向いておらず仕事を続けたほうがいい人もいそうです。

僕たちはFIREのREを「早期退職(Retire Early)」の略ではなく、人生のリスタート(Restart)の略だと考えています。ですので、自分の時間を好きなように使って生きていける、今のライフスタイルが楽しくて仕方ないですね。

(濱口)

FIREとは人生のリスタートである、というのは、なかなかよい考えのように思います。好奇心旺盛で、なんでもチャレンジしてみる人とか、そこまで大げさでなくても、見たことないものを見に行く、食べたことのないものを食べに行く、そんなのが好きくらいの行動力のある人がFIREに向いていると言えそうです。

〔参考記事〕
日本経済新聞:日経マネー:桐谷広人:優待名人の桐谷広人さんが伝授 4億円突破の優待投資術

ダイヤモンドオンライン:濵口翔太郎、記者寺澤伸洋:「FIREしたのに、なんで働くの?」東大→GAFA部長を経て脱サラした作家の“贅沢な答え”(無料会員登録で全文閲覧可能)

テレ朝ニュース:【退職3カ月で1200万失い】FIRE卒業「何やってもダメ」再び働く人増加…市場乱高下で

東洋経済オンライン:柳川洋:26年外資勤務「FIRE=幸せ」と限らない残酷な現実

フィデリティ投信:山崎俊輔:【女性と投資コラムVol.41】FIRE卒業? 早期リタイアを中断した人が求める「働きがい」や「人とのつながり」の価値

マネーインサイダー:Hillary Hoffower [原文] (翻訳・長谷川圭/LIBER、編集・長田真):たった2年で「FIRE卒業」をした男性が語る、早期退職で見失った3つのもの

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